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ミカナリアの策
「それこそ、あり得ません……ッ!」
私は岩壁に拳を叩きつけていた。
「……」
ミカ師範はふぅ、と息を吐き出すと腕を組んで、岩壁にもたれなおした。
「わかった。今はそういうことにしましょう。
それで、だけど……一つ提案があるわ」
「提案……?」
「『Necessary evil』はアタシが追うわ。だからアンタは手を引きなさい」
「どうしてですか!”警告”を受けたのはミカ姉さんのほうでしょう!?」
「あくまで、”アル兄さんの捜索”についてよ。『Necessary evil』自体についてじゃない」
「それは詭弁です!」
「それに別のツテもある。組織にぶつかるなら、組織よ。
アタシの立場なら組織だって動かせる存在もあるの。
クリス、アンタにはそんなツテもコネもないでしょう?」
「それはそうですけど……」
「だから、アンタにはアンタにしか出来ないことをやって欲しいの」
「……え?」
「他のきょうだい達に当たって、探りを入れてきなさい」
「……!」
「アル兄さんが『裏世界の王』でないとするなら……上手くいけば、それで真実がわかるわ」




