円環
そう、”環”だ。
「――」
気功はそういった、外部から作用するものではない――と思っていた。
だけど、キュウさんの構えは”円”。
これは気功の流れを”環”にしてるのではないか?
「ま、さか――」
私は――知っていたはずのことを見落としていた――?
ぐっと一気に野草茶を飲み干し、すぐに道場に戻る。
この、気付きが正解であってほしいと思いつつも、間違いであってほしいという思いも同時に抱いた。
「ふっ……」
息を吐きだし、集中する。
構えは私本来のものに――
気功の流れを環にする、そして意識は”外”へ――
魔法を作動させる時に無意識に行うことを、気功で意識的に行う。
「――」
目を閉じる。
内からだけではない、”外”からも気功が行き届くように――
爪の先に小石が当たるような感触があった。
私はその感触を頼りに、試行錯誤しつつ引き寄せる。
そして、末端からもコーティングされるように引き伸びる感覚。
これが――細部に行き届く感覚と一致することに気付いた。
イメージする、目の前に落ちる斧――いや、それよりも分厚い鉄塊を。
「――はぁっ!」
振り抜く、自身の正拳突きを――
ただそれだけで、強風が私の髪を揺らした。
想像上の鉄塊は難なく打ち抜いていた。




