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緑の記憶
ゆっくりと上半身を起こし、ずりずりと這うように道場の外に位置する縁側に向かう。
幸いにも今は自由時間だ。
縁側で休憩を取って咎められることはない。
「はぁ……」
縁側につくと倒れこむように寝転んだ。
山特有の緑を含んだ香りがする風がほてった身体に心地いい。
思わずそのまま、まどろみそうになるのを、頭を振って耐えた。
流石にこのまま眠ってしまうのは、色々とよくない。
気付け変わりに自身に気功を打ち込んで無理矢理身体を起き上がらせる。
緑の香りと相まってセレナの『神仙術』が恋しい。
魔法や気功ではこの疲労感までは軽減出来ない。
「……ん?」
身体を起き上がらせると、敷居の外にトウコさんに教えられた野草を見つけた。
一息つくなら、なにか飲みたいと思っていたところだ。
ちょうど野草茶を淹れられる。
私は野草を摘むと両手でギュッと圧縮した。
本来ならきちんと天日干しして、ちゃんとした茶葉の状態にしたいところだが、
今すぐ飲みたいのに、そんな暇はない。
私は全てを魔法で行うことにした。




