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才
「あれ」
自分でも、おかしなくらいしっくりくる。
本来、キュウさんの模倣であるはずなのに、自分のそれ以上に馴染んでいた。
「く――あはっ」
すると、床に大の字で倒れたままだだったキュウさんが笑い出した。
「あはははははっ!」
「きゅ、キュウさん?」
「あははははっ!つくづく”才”というのは恐ろしい!こうも簡単に模倣されるとは!」
「っ」
確かに、キュウさんのスタイルはキュウさん自身のものだ。
長年の試行錯誤の中で身についたもので、
それを私に真似られるというのは、キュウさんにとって屈辱でしかない。
「す、すみません、勝手に」
「あはははっ!…………はぁ」
ピタリとキュウさんは笑うのを止めたかと思うと、そのまま立ち上がった。
「キュウさん?」
「……いえ、少々自分を失っていました」
キュウさんは頭を大きく振った。
「自分の戦闘型は、気功の循環を最優先に考えた型です」
「……!」
「他の門下生も真似ようとした者がいなかった訳ではないですが……こうも簡単に真似られるとは」




