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拳の戦い方
私もバク転の要領でそのまま、後方へと距離を取った。
「紙一重、というところですか」
「……幻惑戦術といったところですね」
「これが、自分の”攻め”です。卑怯と言われでも仕方ありませんが」
「いえ……」
戦闘に卑怯もなにもない。
何より、私はすでにエル兄さんにダーティな戦法に対することを教えられている。
だから、そのことに何も不満はない。
むしろ、対処を学ぶ機会とも言える。
問題は、その対処がまだ思いついていないことだけど……
「さて……」
ゆったりとキュウさんが、また構えを変える。
ぐるぐると両手を前方に円形を保つように、
ゆっくり回転させ、仕掛ける機会をわからなくしているようだった。
「ふぅ……」
息を整え、集中する。
強いて言うなら、こちらも幻惑戦術でいくことだろうか。
踊る剣術……あれの応用。
ただ、『偽・無形の型』を手刀で繰り出した時と同じく剣術の劣化になりかねない。
徒手空拳での方法を何か――
「ふっ!」
と、前傾姿勢でキュウさんが頭からこちらに突っ込んできた。




