侵入方法は正面突破
その日、陽が落ちた頃、空には雲一つなく夜空には大きな月が輝いていた。
私達はラン兄さんと共に王宮に向かっていた。
「いいか、直接協力出来るのは宮殿への侵入だけだ」
「わかっています」
ラン兄さんは、王宮でもそれなりの立場を持っているから、連れとして私達も入ることが出来る。
だが、逆に言えばラン兄さん自体は、アクションを起こすことが出来ないということでもある。
王宮に入ったあと、隙を見て私ともう一人だけが抜けて、王子を探す手筈になっていた。
そして、アルベルト王子に接触して、ボロを出させる。
それが、作戦と言うには若干強引な今回の手段だった。
「さて……そろそろだ」
王宮の入り口が見えた。
衛兵達が侵入を阻むように立っていた。
「ランパードだ」
そう言って、ラン兄さんは王宮への通行証を見せた。
「これは『剣聖』殿、どうされました?」
「うむ、剣術顧問として、ラインビッヒ大臣に話があってな」
「備品の要請ですか?直接来られるとは珍しい」
「別件で相談ごともあってな。そのために弟子や従者達も連れてきた」
侵入に協力するため、ラン兄さんが急遽作った案件だった。
「そうですか、許可証のない方はこちらにサインを」
「はい」
あらかじめ考えておいた偽名と偽の個人情報を書くと、あっさりと王宮の門を通ることが出来た。
ラン兄さんが協力者だからこその容易さだった。




