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敗北を認めた者
そこで手詰まり。
ここからの先の手はない。
私にとって正真正銘の渾身の一手が空を切ったことで、緊張の糸まで切れてしまった。
元々気力だけで走っていた私はとうに限界を超えていた。
文字通り力尽きた私はそのまま前のめりに倒れながら、自身を敗北を受け入れる他になかった。
「ぐぅっ!!」
キュウは勢いよく飛び退いたそのままに、受け身さえとれずにそのまま背中から倒れた。
それほどまでに一切の余裕をなしに、一撃を回避した。
故にそこから先はない。
堅牢だった彼の守りは見る影もなく、無防備をさらけ出し、彼もまた自身の敗北を受け入れた。
しかし、追撃がないことに気付いた彼はゆっくりと上体を起こし、前のめりに倒れこむクリスを見た。
「し、師範、これは一体……」
「わからないの?アンタは起き上がり、妹は力尽きた。その意味が」
「これは……」
キュウは自身の掌を見つめ、そして、道着の破れた胸元をみる。
激しい組み合いにも耐えれるよう丈夫に出来ているはずの道着が避け、手刀の衝撃波だけで、
彼の胸板を裂き、血が流れていた。
「これが……勝利なのですか……!?」




