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信念
「おっと、失礼しました。女性の顔に当ててしまいました。
咄嗟に反射での反撃でしたので、許していただきたい」
「――」
言葉を紡ぐことも出来ない。
激しく揺さぶられた脳は言語さえも話すことは困難だった。
「……決まりだ。負けを認めなよ」
わかりきっていたことだ、と、ミカ姉さんの口調が物語っていた。
それに抗うように、私は構えた。
「意地も矜持もあるでしょう。しかし、引くことも必要です。
ましてや、これは命を賭けるような戦いでもないでしょう?」
しかし、敵は構えさえ取らない。
「両足で立つこともままならないでしょう?
下手をすれば死にますよ?」
「――――だと、し、ても」
「――!」
「アル兄さ、んを諦める――くらいなら――死んだほうがマシです!」
「貴女は……」
すると、ミカ姉さんは床を蹴るように立ち上がった。
「構うな、キュウ!沈めなさいッ!」
「く!――畏まり」
まだだ、両足で立てないなら、両手も使えばいい。
私は獣のように四足で床を蹴った。




