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気功術の鬼
「く……!」
構えを一切崩さない気功術――
相手の攻めから、反撃を狙う私の考えは脆くも崩れさった。
「では、またこちらから」
気功の粒子の流れが早くなる。
「……」
それでも、全体の流れさえ捉えることが出来れば、攻撃を見切れるはずだ。
そして、流れの輪が大きく揺れた。
「そこっ!」
右上と左下の二発。
位置さえ見切れば、すり抜けるようにして、躱せる。
そして、流れの乱れた輪の上から叩く――――
「――ふ」
首筋への衝撃。
「!?」
意識が一瞬ブラックアウトしかけた。
気がつくと、私は床に叩きつけられていた。
「っ!」
私は両手の力で跳躍し、大きく距離を取った。
「今のは……!」
正面の流れの輪は注視していたから、そこからの追撃ではなかった。
つまり、放ち、避けたはずの気功が方向を変えて、私に当てたのだろうか。
「ふむ、今のでは軽かったですか。流石です」
キュウさんは本気で褒めているようだった。
それが、かえって馬鹿にされているのと同義に感じた。




