幕間・ある少女の物語 10
「しっかりしな、大丈夫かい!」
気がつくとあたしは宿の女将さんに抱きしめられていた。
「あ……」
「馬鹿だね、この子は……そんなことがあったなら、アタシにでも相談すりゃよかったのに」
「え……でも」
「子供は大人を頼るもんだよ、そんなにアタシらが信用出来なかったかい?」
「女将、さん……」
「なぁ、よかったら、アンタ――」
あたしの事件はそれで終わりだ。
あとのことはと言うと、
借金取りは何故か、あたしの家でのことは覚えておらず、
壊れた家具も借金取りが暴れたものとされた。
あたしの殺人計画は明かされることはなかった。
あるいは、大人たちも感付いて、隠ぺいしてくれたのかも知れないけど――
あたしは、移動販売を辞め、宿屋の従業員になった。
住み込みで、賄いも出るので、生活には困っていない。
女将さんたちは、従業員は”家族”だと言ってくれている。
今はそれでいい――と、思う。
時々、家に帰って整理をしていると、これまでの日々が幻のように思える時がある。
でも、あの外国の硬貨を見ると、現実だったのだと再認識出来た。
その硬貨はというと、今も持ち歩いている。
不思議な現象が起こることはない。
それでも、今ではあたしのお守りで、宝物になった。




