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幕間・ある少女の物語 5
借金取りが来たのはそれから、数日後の仕事終わりだった。
見たところ一人。
そして、この数日の間に準備は終わっていたから、絶好の機会だと言えた。
「金は用意出来たか?」
”出来るはずがない”、借金取りの男はそんな気持ちを隠そうともせず、口の端はいびつに歪んでいた。
「どうぞ」
あたしは家の中へ誘導すると、男は疑う事なく従った。
「茶の一杯じゃ、ごまかされてやらんぞ」
「そうですか?」
その瞬間、あたしは床の板を踏み抜いた。
そして、それに作用し、壁に仕掛けたナイフがゴムの力で男にめがけて射出された。
「うおっ!」
しかし、ナイフはわずかにそれ、男の頬を掠めるだけに留まった。
自分の頬を撫でる男。
あたしはそのまま、家の奥へ駆けた。
男は指に血がついていることに気付くと激昂した。
「ガキの浅知恵がッ!」
逃げるあたしに向けて、突進する借金取り。
あたしはそれを見て、床に置いてあったナイフで、壁沿いに天井にまで伸びたロープが十数本。
そのロープを全て切ると、男の頭上に釣り上げていた家中の椅子やテーブルといった家具が降り注いだ。




