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幕間・ある少女の物語 3
逃げられるなら逃げていた。
だけど、今この家がある以上、逃げる場所なんてない。
そもそも、この家で暮らせることが前提にあって、一人でも生きていけている。
仮にノウハウを活かして、他の街で同じだけ稼げたとしても、住む家がなければどうしようもない。
絶対的にお金が足りない。
それが、あたしの現状だった。
正確な日にちはわからないけど、近々借金取りが請求に来る。
それまでに、返済計画を立てられなければ……どうなるかわからない。
だから、それまでにどうにかメドを立てなければ……
「……でも、それが出来たとしてどうなるの?」
返済計画が出来たとして、真面目に働いてどれだけの年月で300万ルドーを捻出出来るの?
大人になれば、今よりもいい仕事につけるかも知れない。
でも、その頃には利子で300万ルドーはどこまで膨らむ?
あたしに必要なのは返済計画じゃなくて、300万ルドーそのものなんじゃないの?
だとしたら――だとしても、もう手詰まりじゃないか。




