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幕間・ある少女の物語 1
――ある少女の物語
陽も暮れ、あたしは家に戻ると、今日の売上を計算していた。
すると、硬貨の一つの模様が違うことに気付いた。
「あれ、これルドーじゃない!?」
色合いは50ルドー硬貨に近いが、よく見ると大きさも少し違う。
硬貨には100ウェンと書かれていた。
「まいったな。どこかで間違えたのかな?」
単価の安いものを売り歩いている以上、こういうミスは致命的になる。
だから、いつも細心の注意を払っていたのに……!
焦りながら、帳簿と照らし合わせてみる――すると、ズレはなかった。
厳密には、この100ウェン硬貨だけ、余分にあることになる。
「どういうこと?」
と、首をひねったところで思い出した。
今日は売上とは別にお小遣いを貰った。
逆にその分の過分がなく、売上にズレがないということは、その時のお小遣いがこれということになる。
「なんだ、そういうことか」
安心した反面、落胆も覚えた。
100ウェンというのがどれほどの価値なのかはわからないけど、この国――はどうかわからないけど、少なくとも、この街では使えない。
正直、そんなものを貰ってもどうしようもないのだ。




