『剣聖』の実力
「それで、ラン兄さん、アル兄さんの行方は……」
「うむ……おれもこの道場を構える身。直接は探しにいくことは叶わぬが、方々に使者をつかわし、探してはいるが……」
「……結果は芳しくない、と」
「うむ」
「私の旅の目的はアル兄さんを探すことなのです」
「そうか。なれば、道中、困難に当たることもあるだろう……ならば、クリスよ」
「はい」
「久々に稽古をつけよう」
……
私達は互いに竹刀を持ち、向かい合っていた。
「魔法だろうと武術だろうと形は問わぬ、来るがいい」
「は、はい」
私は全神経を集中し、構えを取った。
「ほう……悪くない構えだ。流石に腕を上げたか」
「あ、ありがとうございます」
そうは言うものの、私は打ちこめずにいた。
ラン兄さんの構えはゆったりとしてるというのに、隙という隙が一切ない。
魔法でもなんでも仕掛けた瞬間に、返しに致命的な一撃を喰らう予感があった。
「どうした?こちらからは仕掛けぬぞ?」
「……」
だと、しても――
先手は譲られても、高速のカウンターを防ぐビジョンが全く見えなかった。
私は間合いさえ見切ることも叶わず、額から汗がだくだくと、つたい落ちていった。
「……ふむ、いいだろう。こちらは一切反撃はしない。存分に仕掛けてくるがいい」
「!」
それは屈辱の提案だった。
だけど、それを屈辱と思うことすら恥ずかしい程に、ラン兄さんと私の実力はかけ離れていた。




