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無様な抵抗
「力すごっ……」
売り子がぽつりと呟いていた。
私はそれでも、努めて冷静になるよう言葉を選んだ。
「あなたが強行手段に出るなら、こっちだって容赦しませんよ」
「ぐっ……離しやがれ!」
男はじたばたと足を振って抵抗の意志を見せた。
それと同時に私は男の足を吊り上げていないもう右の手で掴むと男の足の健の隙間に指を押し込んだ。
「があっ!」
男かろうじて自由な右足を振り回そうとした瞬間、私は手を離した。
すると地面に落ちた男がじたばたとのたうち回るようなひどく不恰好な姿になった。
「今ので新聞が汚れたんじゃないですか?買い取ってください」
「な、なんなんだテメェは!?」
「そんなことどうだっていいでしょう、でも、わかりますよね。
あなたじゃ、私には勝てないって」
あえて、私は剣の持ち手に手をかけた。
平手だったが、そのまま抜けると言う意思は隠さなかった。
「っっ!!くそ、ほらよ!」
男は腰に掛けていた袋に手を突っ込んだかと思うと、売り子に向けて硬貨を放り投げた。
「わっ、と」
売り子は両方の手で器用に二枚の硬貨をキャッチした。




