王位継承者
「婚約者……!?失礼ですが、貴族とはいえ、公爵の位では王族の番いとしては相応しくないのでは?」
「それは王位継承者の話ですね。アルベルトは第二位……次男で長男のベルグマン王子が無事王として即位した場合には適用されません」
「……でも、そのお兄さんになにかあれば」
「その時は私との婚約を解消して別の相手になる可能性もありますが……あくまで、その時の話です」
「いや、それこそが狙いだったんじゃ……」
「え?」
「アルベルト王子はそもそも、何故アンヌ王女を殺害したのか……そして、婚約者である貴女をいとも簡単に切り捨て……あまつさえ、冤罪で処刑しようとしたのか……」
「まさか!」
「そう、王位継承権が目的……!」
「待ってください!なら、何故アンヌなんですか?婚姻が進むと王位継承が不利になるアタシはわかります。でも、アンヌは最近王女であることがわかった……妾腹の子で、王位継承権もアルベルトより下の……」
「後々に邪魔になるから、じゃないですか?」
「え?」
「ベルグマン王子を先に殺害したら……そのことがバレてしまったら、アンヌ王女がいる以上、罪人の第二王子は裁かれるかも知れない。
でも、先にアンヌ王女を始末してしまえば、その心配はなく――ベルグマン王子を殺害したとしても、残る王の子供はアルベルトだけになる……であれば、次期国王を誰が裁けるんですか?」
「そんな……まさか……」
「恐らく、”別の末路”でもアンヌ王女の先は短かったかも知れない……」
「アンヌ……どうして、そんな……」
「シンシアさんの身の潔白だけじゃない。顔も知らない方ですが、アンヌ王女の無念も晴らしましょう」