side:A / side:B
――――がくん。
スピードがまさに殺されたように、失速――いや停止した。
「!???!??!?」
言葉が出なかった。
二股に別れた剣がさすまたのように私を押さえ込んでいた。
何故こんなことに?
状況が何一つ飲み込めなかった。
ただ一つ確かなのは、私の腕の中から温もりが消えていたということ。
抱きしめていたはずの、シンシアさんが消えていたということ。
そして、代わりに現れた剣に挟み込まれていたということだった。
そして、なにかを考えるより先に二股の剣に引っ張られ、虚無の先へと、引きずり込まれた。
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「……空?」
私の目の前に飛び込んできたのは、青い空。
そして、最近嗅ぎなれていたのに、終末の獣によって消えたなくなっていた磯の香りだった。
「クリスちゃん!」
すると、すぐに見慣れた顔が飛び込んできた。
「……ちーちゃん?」
上半身を起き上がらせると同時にちーちゃんが私に抱き着いた。
「ああ、よかった!他に方法がなかったとは言え、生身で次元の壁を跳び越えたから……!」
その時になって、私はやっと、”戻って”これたこと、デッキの上に寝かされていたことに気付いた。
「ちーちゃん――――っ!そうだ、シンシアさんは!?」
ちーちゃんは不思議そうな顔をして私の右側を指差した。
目を向けるとシンシアさんが隣合う形で眠っていた。
そして、私の右手とシンシアさんの左手は、離れないよう固く握られていた。




