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side:B 終末への道
――――side of ”before”
大きく地響きがなったか、と思うとマストが傾きだした。
「っ!」
恐れていたことが起こった。
マストの耐久性に限界が来てしまった。
みしみしと軋む音を立てて、木の柱は倒れていく――
「――」
眼下には黒い海のような終末の獣達。
その大群にこの身は放り出されようとしていた。
そして、私はこの時、この場を切り抜ける方法がなに一つ思い浮かばなかった。
高威力の魔法で薙ぎ払おうとしても、既に足場らしい足場は存在せず、
世界を押しつぶさんと膨れ上がった終末の獣の中、今となっては踊る剣技の速度では対応しきれない。
そんな私の雰囲気を察したのか、シンシアさんは呟いた。
「私を、見捨てて下さい」
「――」
思わず、シンシアさんを見た。
確かにシンシアさんを守る必要がなければ、まだ戦うことが出来る。
だけど、それは――
「元から先のない運命だったのです。これまで幸せでした」
その瞬間、シンシアさんは全てを諦観した笑みを見せた。
それまでで、一番無邪気な顔に見えた。
そして、シンシアさんの足はマストから離れた。




