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side:B 飛翔
――――side of ”before”
咄嗟にシンシアさんを庇うように抱き寄せた。
終末の獣の牙は私の庇ったその腕に突き刺さった。
「う、くぅっ!」
「――!!」
激痛が思考をクリアにした。
私はその場から逃れる為の最適な方法を繰り出した。
「『フェニックス・ライド』!」
シンシアさんを抱きしめたまま、
私達は不死鳥と一体となって、獣達を薙ぎ払いながら上空へと飛びあがった。
「うぁああああっ!」
溢れるように飛びかかってくる獣を炎の鳥で振り払うと、一定の高さに来たところで解除し、
私達は船のマストの上に着地した。
「く、クリシュナさん!」
「シン、シア……さん……正気を取り戻せたん、ですね……」
「そんなことより、その身体……!」
私はボロボロになっていた。
だけど、それ自体は大したことじゃない。
回復魔法で治療できるし、何よりまだ私は戦える。
ただ、想定以上に持ちこたえることが出来なかったことのほうが問題だ。
眼下にはまるで、海のように終末の獣達が飲み込まんと押し寄せて来ていた。
本物の海は、終末の獣達によって喰い荒らされたあとだというのに――




