side:B 戦場に慣れぬもの
――――side of ”before”
動きは自然と回転が多くなっていた。
回避と攻撃をこなしながら、全方位に対応するには、回転を多用する他なかった。
ダンスとしては些か不自然な側面もあったが、シンシアさんは私の誘導についてきてくれていた。
「はぁ……はぁ……」
とは言っても、シンシアさんはいっぱいいっぱいだった。
その分、ステップには集中出来ているようでもあったけど、
既に全開である分、限界がいつ来てもおかしくなさそうだった。
『グォォオンッ!』
『ウォオンッ!』
「っ!」
終末の獣の挟撃……前後から同時に飛び込んでくる。
「――」
駄目だ、回転では間に合わない――
しかし、両手で対応しようとシンシアさんと繋いだ手を離せば、
ステップに集中しているシンシアさんのリズムが崩れる。
「――はぁっ!」
咄嗟に投げる程の勢いで剣を突き出し、正面から来る獣の額を突き破る。
「――ぅぁっ!」
そして、すぐに引き戻すと剣先を手で支えながら、柄で後方から来る獣の目を突く。
『ァァウッ』
「――んのぉっ!」
引き戻した勢いで、デッキに叩きつけた。
完全に仕留めきれはしなかったが、この瞬間の窮地は脱した。
はずだった――
「あ――?」
終末の獣に血は流れていない。
それでも叩き潰した時、或いは突き破った時に、肉体を構成していた黒い液体が漏れ出て、シンシアさんの瞳を覆った。
驚きからか、シンシアさんの足が、がくんと止まってしまっていた。




