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”シナリオ”の影
「え、ええ……わかるんですか?」
「わかります……と言うより、わからせようとわざと口調を変えてるんですよね?」
「ええ……これが本来のアタシ……私ではない喋り方です」
「なるほど。そうなると厄介そうですね」
「どういうことですか?」
「この本来のシンシアさんではない人格……仮に”シア”さんとでも呼びましょうか?」
「構いません」
「シアさんは神に等しい傍観者としての視点で本来のシンシアさんの末路を見ていたんですよね?」
「そういう言い方も出来ますね」
「そして、理由はわかりませんが本来のシンシアさんの身体に乗り移ったことでその末路を回避しようとした、そうおっしゃいましたよね?」
「はい、その通りです」
「つまりは未来を知っている者が行動したのに、それを上回る強制力……シアさんの言葉を借りるなら、シナリオが働いた……それってもしかして、王子の権力以上に何かが……とてつもない大きな力が働いたのかも知れない、そう考えられませんか?」
「アタシもそれを感じているんです……だからこそのシナリオ……運命とか宿命のような力を感じるんです」




