side:B time limit
――――side of ”before”
傾きだした船の中、私は踏ん張りながら、シンシアさんを抱きかかえた。
「ひゃっ!」
「外に出ます、掴まっていて下さい!」
最悪、船がこのまま沈んでいったとしても、デッキ上なりに出て、海面を泳ぐ、漂うという方法は可能だ。
しかし、内部にいては船ごと沈んでしまう。
そして、この期に及んでも、あちらへの影響を考えれば、自身の手で船を壊して進む訳にはいかず、
沈みゆく船の中で通路を通っていかねばならなかった。
「く、クリシュナさん、あれっ!」
シンシアさんが指刺した通路の先には黒い獣が居た。
「な……!?」
どうして、こんなところに――そう思う間もなく、上から飛び降りるように獣は襲いかかってきた。
「――『飛閃脚』!」
エル兄さんに指摘されてたように足技を磨いていてよかった。
両手が塞がった状態で、襲いかかる獣の延髄に蹴りを見舞い、同時に上の方へと跳び移ることが出来た。
「クリシュナさん、今のって……」
心当たりがあった。
しかし、口にする前にデッキへと飛び出すと、黒い獣達が船を――海を空を世界を――喰らっていた。
「……”終末の獣”」




