お礼
ラン兄さんは何部屋か用意させると言っていたが、一部屋で十分な広さがあったので、
他の部屋は辞退して、四人で一部屋に泊まることにした。
「メイドの私までご一緒してもよかったのでしょうか……」
「アイナさんはこの家のメイドではないんですから、客人としていればいいと思います。
ラン兄さんもそうおっしゃると思います」
「そう……ですか」
「お言葉に甘えましょう、アイナ」
「はい。お嬢様」
「そうだ。クリシュナさん」
「なんですか?」
「ドタバタして、きちんとお礼を言えてませんでした。ありがとうございます」
「私のことはいいです。それより、アイナさんに言ってあげてください。
奴隷商人から解放されて、ボロボロなのに、真っ先に貴女の心配をされてたんです」
「そうなのね……ありがとう、アイナ」
「いえ、私はただ無我夢中で……クリスさんがいなければ、何もできませんでした」
「それでも、貴女がいなければ私は生きていなかったかも知れない……ありがとう」
「お嬢様……」
「令嬢と使用人と言っても、それ以上の信頼関係があるんですね……」
そういう、セレナはどこか羨ましそうだった。
「セレナ……」
「セレーナさんもありがとう。色々手伝ってもらったみたいで」
「いえ、わたしこそ大したことはしてませんよ」
そういうセレナはどこか恥ずかしそうにはにかんだ。