協力
「その悪女を匿え、と?」
「私は無実なのです。どうかご協力いただけませんか?」
「ああ、構わない」
「え?」
余りにあっさりとラン兄さんが了承したものだからか、シンシアさんは素っ頓狂な声が出た。
「ご了承いただける、ということですか?」
「勿論だ。家に客間が何室か空いていたはずだ。用意させよう」
「私が言うのもおかしな話ですが……そんな簡単にご理解いただけるのですか」
「なに、簡単なことだ。自分の妹を信頼している、それだけのことだ」
「ラン兄さん……!」
「あ、ありがとうございます!」
シンシアさんは深々と頭を下げ、私達もそれに従うように礼をした。
「ラン兄さん、それでもう一つ協力してほしいことがあるのですが……」
「察しはつく。シンシア嬢の無実の証明か」
「はい」
大まかな内容を説明すると、ラン兄さんは腕を組み唸った。
「そうか……この国の王子が真犯人、か」
「私は……見たのです。アルベルト王子がアンヌ様……アンヌ王女を手に掛けたところを」
「ラン兄さん、アイナさんは現場を目撃したことで、そのあとすぐ人さらいに攫われ、
奴隷商人に売られたんです。これは明確な口封じだと思います」
「そうだろう。だが、あくまで状況証拠。王子の手によるものとは証明できない。アイナ嬢の証言にしてもシンシア嬢側のメイドの証言では王子を断罪することはおろか、シンシア嬢の無実の証明も難しいだろう」
「そんな……」
「ふむ……今日は疲れただろう。使用人達を急がせるから、ゆっくり休みなさい。一晩休めばいい考えも浮かぶだろう。此方でも何かないか考えてみよう」
「……わかりました。ラン兄さん」