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消えた彼女
「……あれ?」
「まだ、終わってませんの?」
私達の区画に戻ると、外に出していた積み荷の木箱がまだ出たままだった。
「流石に一人に任せては終わりませんでしたね」
「そうみたいですね」
外にはいないのだし、ちーちゃんは馬車の中で整理をしているのだろう。
そう思い、私達は馬車の中に入った。
「ちーちゃん、私たちも……」
「あら、中にもいませんの?」
「トイレかなにかかな……」
と、その時まではそう思っていた。
しかし、なんとはなしに馬車の奥にまで歩みを進めた私は大変なことに気付いてしまった。
「え……セレナ?」
木箱を確認していた、シンシアさんも私の呟きに気付いて、こちらを見た。
「セレナがいない!?」
「なんですって!?」
結晶化したセレナは、当然ながら自分の意思で動くことは出来ない。
そのセレナが消えた。
そして、作業途中なのに、姿が見えないちーちゃん。
別れる前に、ちーちゃんが言っていた嫌な予感が頭を掠めた。
「ついてきてください、シンシアさん!本当に大変なことになってるかも知れません!」
「わ、わかりましたわ!」
私達は飛び出すように馬車から出ていった。




