見る目
ブリッジを出た私は、思わず目の前にあった樽に手をついて、大きくため息を吐いた。
「正直、リタさんがあんな人だとは思ってませんでした」
「多少なりとも、商売人気質なところはありましたが、あそこまでシビアとは思ってませんでしたわ」
「そういう問題なんですか?」
「商人としては、彼女の言い分はわからないでもないですわ。
ですが、船長としては些か無責任に思います」
「同意見です。少なくとも、リタさんは船長に比重を置いた人だと思ってましたが」
「と、言いましても、ほんの数週間の付き合いです。
私達がリタ船長の人格を見誤っていたのかも知れません」
「そうなんでしょうか……」
シンシアさんが元気づけるように私の肩をポンポンと叩いた。
「とは言っても、私達は私達の出来ることをするしかありませんわ」
「そうですね……じゃあ、とりあえず戻って、ちーちゃんと合流しましょうか」
「ええ、わかりましたわ」
私は前のめりに崩れていた体勢を起き上がらせた。
その時、ふと疑問に思った。
ブリッジなのに、どうして、リタ船長一人しかいなかったのだろうと……
よくよく考えれば、機器類が機能していないのだから、用がなくて当たり前か、と自己完結した。




