306/1085
狂人の集団に正常な人間が一人入れば、正狂は逆転する
なんだというのか?
何が起こっているのか、私自身わからなかった。
「……っ」
それでも、現状の把握をすべきだろう。
邪魔にならないようにしたとは言え、デッキで釣りをすれば、印象に残るだろう。
私は他の船員達が覚えてないか、確認に走った。
「え、さぁ……」
「覚えはありませんね」
「そんなことありましたっけ」
「いえ、見てません」
「あはは、そんなことあれば覚えてますよー」
「え、そんなこと許可した覚えはないよ」
「……」
船中を周り、最後にリタ船長に聞いてみたが、誰一人として覚えていなかった。
「まぁ、許可が欲しいっていうなら許可するけど」
「……あ、どうも、ありがとうございます」
とは言え、許可を貰ったところで、釣りをしている場合とも思えない。
私はデッキに出て、潮風に当たりながら、考えることにした。
「これはどういうこと……?」
集団催眠や暗示……そのテの抵抗力の強い私がかかっていないと考えれば、一見辻褄は合いそうだ。
しかし、その場合、作ったはずの”オモック”がない理由を説明出来ない。




