現状回帰
お刺身を食べ終わった頃には空は夕焼けに染まっていた。
そこから、ちーちゃんと手合わせを行った。
そこから、一時間。
ちーちゃんが限界ということで、手合わせを終えた私は、気分転換に再びデッキに上がった。
辺りはすっかり暗く、月が空高く輝いていた。
船員達は夜になっても、動いていたので、釣りのポイントに使ったところにまで歩いていくと、
私は夜空を眺めた。
思えば、こうしてゆっくり空を眺めることなんて、いつぶりだったかもわからない。
旅を始めてからはもちろん、家にいた頃も鍛錬に明け暮れ、空を見上げる余裕すら、
私にはなかったと思う。
一つ言えることは、私には立ち止まっていられる時間、余裕なんてないと思っていた。
だから、私は空を見上げることすら、忘れていたのだろう。
それは大きな気付きだった。
一度、立ち止まって考えること、それを私は忘れていたのかも知れない。
未だ攻略法の見えないラン兄さんの宿題、
結晶化したセレナの治療方法、
そして、アル兄さんの捜索――――――――――
見えないから、突き進むばかりでなく、現状から考えることも重要なのではないか。
私は月を見ながら、考えを巡らしていた。
どこからか、歌うような海鳥の鳴き声が聞こえた。




