実食
「……イワシ、が一番近いかな」
「そうですね」
「船員さんに聞いたところ、”ナーブ”って魚らしいですけど」
「聞いたことないね」
「聞いたことありませんわ」
「……同じく」
私達は精いっぱい薄く切って3切れづつのお刺身を食べていた。
「まぁ、市場には出回っていない魚なんでしょ」
「確かに、漁師さんの賄いでよく出るって言ってました」
「それでも、久々のビスケット以外の食べ物ですわ!
贅沢を言うなら、お酒も欲しいところですが」
「お酒って、麦酒ですか?」
「いえ、お刺身にはやはり、日本酒が欲しいところですわ」
……ニホンシュ?
「流石にこの世界にはないんじゃないの?」
「いえ!ビールがあったなら、日本酒も似たような製造をしている地域があってもおかしくないですわ!」
「だったら、まずは米食をしている地域を探さないとね」
「よくわかりませんが、お酒に合う合わないがあるんですか?」
「もちろんですわ!もし見つかったら、クリシュナさんもご一緒しましょう!」
「は、はぁ……」
もし、そうなったら、そうなったで、また面倒なことになりそうな気がしてならない。
主にシンシアさんの酒癖的な意味で。




