種明かし
「こ、ここは……」
「お嬢様!」
「アイナ!?無事だったのね!」
「しっ!静かに!まだ、広場からは遠くないです!」
私達は馬車の中で合流していた。
「クリスさん、これからどうするんですか?」
「王都には兄がいるので、匿ってもらうつもり。御者さん地図のこの場所に向かって下さい」
私が場所を指し示すと御者は返事の代わりにシルクハットで敬礼のようなポーズを取った。
「と、ところで、アタ……私はどうして生きているのですか?」
「初めから作戦だったんですよ。あのフェニックス教団は全て私です」
「す、全て!?」
「取り囲んでいたローブの集団は私の幻覚魔法、そして、貴女を焼いたリーダーは私です」
「貴女が……!?でも、顔が違うような……」
「念のため、何重にも誤認魔法を掛けて変装していましたから」
「で、ではあの火の鳥も幻覚……」
「いえ、あれは本来の魔法ですね。ギロチンと野生動物の死骸を焼いて、断頭台ごと貴女が焼き殺されたことにしないといけなかったので」
「と、とんでもない魔力をお持ちなのですね……」
「大したことありませんよ。セレナ、アイナさんもありがとうございます。上手く空に魔法を放ったタイミングで死骸を投げ入れてくれて」
「いえ、それこそ大したことはしてません」
「死骸を触るのは抵抗はありましたが、クリスさんの大立ち回りに比べれば些細なことです」
「あ、ちゃんと消毒液で洗った?」
「その辺りは抜かりありません」
「手だけじゃなく、髪や衣類にも使っておくのよ?」
「わたし達の心配はいいですよ。今はシンシアさんのことを考えないと」
「そうだね。一番重要なシンシアさんの顔は割れている訳だし、
なるべく早めに手を打たないと……そのあたりもラン兄さんに相談しないと」
「お兄様……ご協力いただけるのでしょうか?」
「ラン兄さんは厳しい人だけど、理由を話せばわかってくれるよ。いきなりの話で迷惑はかけちゃうけど」
「……本当にわかっていただけますか?」
アイナさんが不安そうな声を上げる。
「筋はきっちりと通す人ですから」
「この国の王子が真犯人だとしてもですか?」
アイナさんの心配はわかる。
でも、それは杞憂だ。
「ええ、勿論」
ラン兄さんは権力に屈する人ではない。