不死鳥
群衆を取り囲むように赤いローブの集団が広場に続々と押しかける。
そして、その中の一人――私が群衆をかきわけ、中心の断頭台へと歩みを進める。
「な、何者だ!?」
声を荒げる執行人。
それを制する様に手を挙げた。
「我らはフェニックス教団なり!」
その宣言と共に、赤いローブの集団は火の鳥の旗を掲げた。
「フェニックス教団?それが何の用だ!?」
「野蛮なるギロチンによる処刑、それを止めに来た」
「な!?悪女に味方するつもりか!」
「否!断じて否なり!」
「なっ!?」
「問題は野蛮なるその断頭台だ!ギロチンなどという方法ではこの地が悪女の血で穢れるのだ」
「……なにが言いたい!」
「フ……知れたこと」
そう言うと同時に私は両手に魔力を込めた。
「我らがその処刑……代行させていただく!『フェニックス』!」
魔力を解き放つと共に空を魔法で構築された火の鳥が舞う――
「さぁ!聖なる炎で血も!骨も!灰も!塵さえ残さず!燃やし尽くしてくれよう!」
そして、舞った火の鳥は私の元へと戻り、私と同化した。
「『フェニックス・ライド』!」
火の鳥と一体になった私は断頭台ごと、悪女を炎に包んだ。
そして、炎の柱が広場の中心に湧き上がった。
歓喜と困惑と怒号が入り交じった歓声があがる。
やがて、燃やし尽くした残骸を残し、火の鳥は空へと飛び立った。
歓声と共に散り散りに消えていく赤いロープの集団。
観客達は見世物が終わった余韻に浸っているようだった。
執行人達は唖然としながら、燃え尽きた残骸を見下ろしていた。