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キャッチ
違法薬物を使用して、トリップ状態に陥ると、
目に映る世界が崩壊したり、自分とそれ以外の境界がわからなくなる程になることもあるらしい。
強いて言うなら、”それ”に近かった。
現実世界にいるのに、まるで抽象画の世界に叩き落とされたかのような状態だ。
「……」
私は他の人と比べて、こういった幻覚耐性が高い。
今回で言っても、他の人は言語を話せなくなる程だったが、私は冷静さを欠く程度だったし、
私自身を催眠で操られたことはなかった。
その耐性の高い私をこのような状態に陥れるのが、あの妖精の本気だった。
それでも――
「『気功圧縮』!」
私に迫る妖精を捉えていた。
「あぐっ!?」
崩れていた世界が元に戻っていく。
妖精は私の胸の前、それを私は両手の気功で抑え込んでいた。
「な……んで……っ!?」
「あなたが姿を見せた時点で、あなたの気配を感じることが出来ました。この人を助けるためでしょうが、直接こちらに来たのはまずかったですね」
「そ、そんな……!?」




