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逆上
「っ……!」
妖精は奥歯を噛みしめていた。
話した感じから、妖精は余り頭がいいとは思えない。
舌先三寸……論理的に丸め込めれるかも知れない。
「この人を生かすも殺すもあなた次第です」
「……」
「間接的にとは言え、あなたが友達を殺すことにもなりかねないんですよ?」
「……!」
目に見えて、妖精は困惑を深めるように動じていた。
「逆に言えば、この人を助けられるのはあなただけとも言えますよ?」
詭弁だった。
しかし、彼女を丸め込む後押しになると思った。
だが――
「……そうだ、シュウを助けられるのはあたしだけなんだ」
「!?」
不穏な空気を感じた。
「だから、シュウを殺される前にオマエ達をみんなやっつければいい!!」
妖精は開き直ってしまった。
妖精の姿は再び見えなくなった。
「!」
そうはいかないと、白髪の男を見下ろす。
だけど、真下にいるはずの男の姿はいなかった。
「!?」
男だけじゃない、周りに誰もいない……!
地面がせり上がり、上下反転する。
上も下も何もわからない。
「うっ、げ、幻覚ですか!!」
これまでで、一番強い幻術だった。




