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ネゴシエイト
「この人のために戦おうって言うんですか?」
白髪の男は倒れ伏したままだ。
「……シュウに手を出さないで」
「!」
私が気圧されそうなほどの圧だった。
しかし、同時にここが彼女の弱みだという意味でもあった。
ならば、それを利用しない手はない。
「あなたが何もしなければ、殺しはしません」
「?!」
私は妖精相手に交渉を仕掛けることにした。
「ですが、あなたが危害を加えるなら、その芽を摘むために、この人を殺さないといけません」
「っ!そんなのっ、シュウを連れていくのは変わらないじゃないっ!」
妖精は困惑しているようだった。
「いいえ、変わりますよ。あなたが手を出さなければ、この人は死ぬことはありません、この場では」
「でも!連れてかれるなら、殺されるかも知れない!」
「どうでしょうか、この人は罪を犯しました。
その罰が死に等しいものなら、そうなるかも知れませんが」
それを判断するのは私じゃない。
「やっぱり、そうじゃない!」
「いいえ、違いますよ」
「え?」
「無理に抵抗すれば、確実に死にます。でも、それをしなければ、死なない可能性が出ます」




