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醜悪なるモノ
万来の拍手と歓声が広場を覆っていた。
その歓喜の理由は明白だった。
国家史上最悪の悪女、シンシア=エルシャーレが今まさに断頭台によって、
公開処刑されようとしていたからだ。
観衆達は悪女への鉄槌を今か今かと待ち望んでいる。
涙はとうに枯れ果て、絶望の淵に追いやられたシンシア……
彼女の無実を知るものは他に誰もいない――
ある一部を除いては――――
……
「さぁ、悪女よ。最期に言い残すことはないか?」
「……私は……アタシは無実です……」
「フ……この期に及んでなお嘯くか」
「本当のことです」
「くどい!疾に審判は下っているのだ!」
断頭台に押さえつけられるシンシア、彼女にはもう抵抗する気力はなかった。
「さぁ!裁きの時だ!」
執行人の宣言に一段と沸き上がる歓声。
シンシアはその光景をひどく醜悪なものだと思っただろう。
執行人が刃を落とそうとした瞬間、透き通った声が響いた。
「その裁き、正当に非ず!」




