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無邪気の狂気
「掟とか、ルールとか、そういう決まりなんて関係ないんだよ」
「え?」
「妖精は自由なんだよ」
「でも、その自由はルールを守ってこそでしょう?」
世の中にある自由とは秩序を守ってこそ、尊重される。
「妖精には関係のない話だよ」
「じゃあ、掟はなんなんです」
「さっき言ったでしょ、そんな”決まり”はないんだよ」
「……」
明文化されたようなものではないと言うことなのだろう。
だけど、それなら――
「だとしたら、あなたも排除しないといけなくなります」
「……」
無秩序な自由は淘汰されるものだ。
「あなたにその”自由”があるのなら、私達にもあなたを排除する”自由”があるんです」
「……ふ」
妖精は僅かに口元を綻ばせた。
「なにが可笑しいんですか?」
「ふふふ……妖精を排除する?そんなこと不可能なんだよ」
「!?」
「あたしたち妖精は自然そのものなの。あなた達人間が自然そのものを滅ぼすことが出来るの?」
そういう妖精の眼は本気だった。
いや、そもそも、嘘を吐くということも知らないのかも知れない。




