友と掟
「……」
言わなければならない、”警告”がある。
しかし、それを今彼女に告げるのは躊躇われ、とりあえずは別の気になることを聞くことにした。
「……あなたはどうしてここに?」
「え?」
「他の怪物達がいなくなったのと、同時に妖精もいなくなったんじゃないですか?」
「わからない」
「どうしてです?」
「妖精の仲間……みんな突然いなくなった。妖精の住処にいるの、あたしだけ」
「そう、ですか……」
そもそも、モンスターがいなくなった理由もよくわかっていない以上、
それを免れた存在がいてもおかしくはないのだろう。
「では……この人、シュウ、でしたか?」
「うん、あたしの友達」
「その友達が何をしていたのか、わかっていますか?」
「よくは知らない。でも、友達の頼みだったから……」
「協力した、と?」
「うん」
「他の人を惑わし、催眠で操っていたんですね?」
「それが、シュウの頼みだったから」
「そう、ですか……でも、それは人間のルールを大きく逸脱したものになります」
「……?」
「妖精にもルール……掟だとかそういうものはあったはずです。
大人になった子とはもう、遊べない、とか」
「……」
「そういう意味では、あなたは人間のルール、妖精の掟の両方を破ったことになりませんか?」
「……」
妖精の表情は変わらない。
理解しているのか、理解出来ていないのか、読めなかった。




