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幻惑
「……この大きさ、比較的スリムなはずのワタシでも通るのは難しそうだね」
「この輪を崩さずに通り抜けられる者だけが、”妖精の通り道”を抜けられる……妖精以外はたまに迷い込む小動物と小さな子供だけなのさ」
「通り抜けられなかった者は?」
「……多分、だけど、記憶を失い、妖精に惑わされる」
と、そこに私は引っかかりを感じた。
「待ってください。そうだとすると、私を含め、表部隊は皆ここを通ろうとしたんですか?」
「うん……?」
「確かに、山道から近いと言っても、直接は通る必要のない場所だね」
「そもそも、正気を失っていたとしても、私は記憶は失ってません。こんな場所、通った覚えはないです」
「ふーむ、だとしても他にそれらしい場所は……」
「そもそも、”妖精の通り道”の干渉範囲はどれ程なんです?山道にまで至るなら……」
「いや、ここが入り口なら、ここからのはずだよ。現にワタシ達は影響を受けてないじゃない」
「それじゃあ……?」
なんだろう、私達は何かとんでもない見落としをしているような……




