妖精の通り道
「妖精って種族は他の種族と比べて、各段に肉体面で脆い分、
不思議な術を使って、天敵を惑わすことに特化した種族なんだ」
「え、ええ、でも、妖精はもうここには……」
「まぁ、聞いて。
そう言う術を持つ種族だから、
住処の近くには人や他の動物を惑わす仕掛けを作る――それが妖精の通り道」
「妖精の、通り道……」
「詳しい仕組みは解明されてないんだけど、
それは罠とか錯覚とかの類いと同じだから仮に妖精がいなくても、解除しない限り存在し続ける」
「じゃあ、それがまだ残ってるってことなんですか?」
「多分ね。ワタシも山賊の拠点ってことだから、頭の片隅には浮かんだけど、とっくに解除されてるものだと思ってた。元は妖精の住処なんだよね、この辺りは」
そう聞かれたリタ船長は困惑しながらも、頷いた。
「そうだけど……でも、それなら、山賊達自身にも支障が出るんじゃないの?」
「……いや、それで、よかった。そういうことなんですね?」
ちーちゃんは頷いた。
リタ船長は困惑したまま、こちらを見た。
「先程も言いましたが、私達、表部隊と同じように、山賊達も理性を失っていたんです。
山賊達の中で唯一、正気だったのは、リーダーの白髪の男だけだったってことです。
そして、リーダーは正気を失った山賊を操っていた……
逆に言えば、リーダーにとっては他の山賊が正気を失うのは都合がよかったんです。」




