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窮鼠猫を噛む
「とった……!」
「え……?」
ズドン、という衝撃が一瞬、私の息を止めた。
意味がわからなかった。
銃口を突き付けていたとしても、完全なゼロ距離にはならない。
『エアスト・フィールド』は未だ展開し続けている。
風の膜によって、抵抗を失い、僅かな衝撃もペンダントの加護によって無効化しているはずだ。
距離による問題……?
しかし、2、3m離れた場所と至近距離にそこまでの差があるとも思えない。
加えて、ライフル弾は弾頭の潰れによる貫通力の変化の関係によって、
遠距離のほうが貫通力が上がるという話もある。
ましてや、銃は武器だ。
武器はただ、武器で、そこに意思はないし、
それでいて、銃は装置に近い。
気合いを込めたところで、威力が上がる訳じゃない。
命中などの精度は腕によるが、
剣などと違って、扱いによって大きく威力が変わるものでもない。
ああ、だから――
「――」
この一瞬の、空白は説明がつかない――
そう、一瞬だ。
しかし、今、この展開を変えるのにはその一瞬で充分だった。




