騒動
「ふぅ……」
一仕事終えた私は近くにあった樽の上に腰を下した。
「クリスさんはどこまでわかってたんですか?」
「なにが?」
「今回のことです。まるでなにもかもお見通しみたいな……」
「たまたまだよ、たまたま」
「本当にですか?」
「本当だよ。なにもかも、なんて無理だよ」
「そうでしょうか……クリスさんなら出来そうな気もするんですが」
「過大評価だよ」
「……これから、クリスさんはどうするんですか?」
「勿論、アル兄さんの捜索に戻るよ。とはいえ、この街にいても、もう情報は集まりそうにないな……」
セレナにはきょうだいであることを打ち明けていた。
セレナの看病の間、時間を見て、街で聞き込みをしていたが、成果はなかった。
「わたしも……ご一緒しては迷惑でしょうか?」
「いいよ」
「あ、あっさりしてますね」
「だって、行くあてもないでしょ?」
「ない、ですね……」
「じゃあ、腰を落ち着けられる場所が見つかるまで、一緒にいようよ。それが、私の責任だと思うし」
「責任だなんて、そんな……」
と、その時建物の方で騒ぎが起こった。
「なんだろ?」
「捕まっていた、奴隷の人達が解放されたみたいですけど……パニックになってる人がいるみたいです」
「ちょっと、見てくるね」
私は人ごみの中に入っていき、その中でボロボロになりながら、
歩みを進めようとしている女性を見つけた。
「な、なにをしてるんですか?治療をしないと……」
「いいんです!それどころではないんです!」
「落ち着いて下さい!何があったんですか?」
「このままだと……このままだと……お嬢様が処刑されてしまうんです!」