唯一の――
「チィッ、どちらにせよ、早く合流してみないといけなさそうなのは、間違いなさそうだね」
「うん、だから、先行するよ」
「なに、言ってんだい。一人でこの罠を突っ切るのは危険さね」
「ううん、ワタシ一人なら、方法はあるんだ」
「方法だって?」
「うん、ここにある罠……今まで見ていた限り、対空攻撃となるようなものはなかった」
「対空……まさか!?」
「うん、簡単な話だよ、跳び越えればいいんだ」
「飛び越えるって、まさか、空でも飛ぶつもりかい!?」
「いいや、”飛ぶ”んじゃなくて、”跳ぶ”んだ」
「え?」
「見ればわかるよ……」
そう言うとちーちゃんは、ぐっと姿勢を低くしたかと思うと、反動をつけて高く跳びあがった。
「なっ……!?」
リタ船長が驚いたのは、その行動そのものではなく、
余りにも人間離れした高さまでに跳びあがった垂直飛びに対してだった。
そして、構わずにちーちゃんはその最上点に剣を突き上げた。
「『閃沙』――」
この技の性質は本来起こりえる、法則を捻じ曲げることだ。
通常ならば、このまま、重力に負けてただ落下するはず、しかし、その落下する方向を転換する――
「――『突貫』!」
物理法則を捻じ曲げられた彼女の身は、剣を先頭に、罠が張り巡らされてあるであろう、
木々の上空を突き抜け、目的の場所にまでたどり着いた。
そう、この物理法則の捻じ曲げこそ、彼女の力の本質だった。
だけど、チヒロ=サイドウは、直感的に使っているだけで、
まだ、その事実に気付けていない。




