譲渡
10分後、建物は憲兵達が押しかけ、奴隷商人達は逮捕された。
騒ぎを聞きつけた野次馬に混じり、新聞記者達を初めとしたマスコミも複数遠巻きに見守っていた。
この状況が全てだ。
ごまかしも不正も出来ないだろう。
「いやぁ、今回もクリシュナさんですか。ご協力感謝します」
「いえいえ」
「ですが、全て我々に任せていただければ……わざわざ、クリシュナさんが危険をおかす必要もありませんのに」
「そうですね。一人の死者も出さないのならそれでいいかも知れません」
「……これは手厳しい」
「それと、捜査協力もしますよ」
「捜査協力?」
「ええ、顧客リストです。必要ですよね、当然」
「!……勿論です。ありがとうございます」
「ちなみにですけど、中にどんなお偉いさんがいたとしても、憲兵はそんなことは関係なく、犯罪者を取り締まりますよね?」
「も、勿論です」
「その言葉が聞きたかったんです。マスコミの皆さんの前でね」
「……」
憲兵の表情は引き攣っていた。
「ちなみに、今渡したものにコピーがないとは限りませんからね」
「っ!」
「無闇にばらまいたりはするつもりはありませんが……不正が行われないとも限りませんから」
「勿論、そんなことは起こりません!」
「信じますよ?とはいえ、明日の記事にはなると思いますので、嘘には出来ないと思いますが」
「え、ええ……」