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その兵士の命の価値
確かに彼の重装備なら、単独でもある程度の奇襲には備えられるだろう。
しかし一方で、罠の対処の面では、その重装備が枷となって、俊敏な動きが出来そうもない。
心構えとしては、立派だとは思うが――
「それでも、適任なのは私です」
あえて、剣に手を添えて殺気を出す。
実力さえはかることが出来るのなら、私の言いたいことはわかるはずだ。
「……だとしても、だ。兵士としての責務として、
いかに実力があろうと、君のような一般人の少女を盾にすることは許されない」
その矜持はわかる。
でも、一方でそれは無駄な犠牲を生みかねない。
「責務……それはわかります。それでも、それでは命を無駄に捨てるのと同じです」
「そんなつもりは……」
「命を賭けるのなら、もっと、重要なところでそうして下さい!」
「!」
兵士が言葉に詰まったのを見て、私は前に踏み出した。
「それにご心配なく、私は盾になるんじゃありません」
「え?」
「盾とは、その身をもって防ぐもの……私は一撃ももらうつもりはありません」
強いていうのなら、旗だ。
私は、進むべき道を示す目印となろう。




