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チヒロの推察
「こっちの場合、何か思いだすかどうかだからね。一応、何か思い出さないか、色々やってみたんだけど」
「色々?」
「うん、色んなものを見に行ったり、昔のことを思い出そうとしたり、頭を壁にぶつけてみたり、
辛い料理を食べてみたり、桶に水を溜めて溺れるまで顔をつけてみたり、目隠しで剣を振ってみたり……」
「そ、そうですか……」
「でも、なにも成果はなかったよ」
そこまで、やられて責めようはなかった。
「でも……クリスちゃんの話を聞いて、ひとつ思ったことがある」
「なんですか?」
「魔物の話なんだけどね」
討伐隊は、山賊の拠点に向けて進みだした。
その中で聞いたちーちゃんの話はこうだった。
熊が冬眠するように、生命活動が著しく困難になった状態で、封印状態になる魔物がいるらしい。
その魔物の中に、身体を結晶で覆うタイプが一部に存在するというのだ。
「……じゃあ、セレナもその魔物のように、って言いたいんですか?」
「あるいは、だけど」
「でも、セレナは人間――」
「――本当に?」
「っ!?」
「――――絶対にそうだって、言い切れるの?」




