謝罪
「潰される前に潰す……当たり前の考えかたでは?」
「……意外にクレバーだな。悪党向きだ」
「今回は褒め言葉として受け取っておきます」
「褒めてんだよ。だが、本当に国がどうなるかわからねぇぞ?
公的事業にだって、奴隷が使われている案件だってあるんだ」
「知ったことではないです。真に救われるべき人が救われるなら、救わない国がどうなろうと」
「過激な思想だな」
「人として当たり前の感情だと思いますが」
私はセレナだけじゃなく、今も奴隷被害にあっている人々を助けたい、それだけだった。
「それより、そろそろ頭を下げてもらえませんか?」
「……ああ」
男はセレナに向き直り、額を床にこすりつけた。
「すまなかった。謝って許されることではないだろうが……」
「……」
「セレナ?」
「……どうしたらいいかわかりません。許すとか許さないとか、どういう言葉がいいのかも」
「無理に答えをださなくていいんじゃないかな」
「え?」
「許す必要はないと思うし、その気持ちを無理に消化する必要もないと思う。ただ、明確に奴隷商人達が頭を下げなきゃ、道理が通らないし、セレナも気持ちを解消したい時に困ると思うよ」
「クリスさん……そうですね」
「さて、そろそろ、憲兵が踏み込んでくる頃です。リストを出して下さい」
「……わかった。だが、どうするんだ?憲兵以外の手に渡ったところで握りつぶされない保証はないぞ」
「いえ、憲兵に渡しますよ。正規の裁きを受けさせるために」
「どういうことだ!?」
「それは、外に出た時にでも分かるでしょう」




