急転
「包帯、外しますよ」
確認を取って、私はレナさんの目を覆っている包帯を外した。
「これは……」
初めて目の当たりにした、彼女の瞳は結膜部分――所謂白目と言われる箇所が真っ黒に変色していた。
「……失礼しますね」
呆気に囚われていた私達だっだが、意を決してセレナがレナさんの側頭部から頬を包むように両手を添えた。
「……」
セレナが”神仙術”で治療を施そうとする――――その時、ちーちゃんが叫んだ。
「待って!!」
「え…………あ?」
ちーちゃんの制止は間に合わず、セレナは糸の切れた人形の様にその場に崩れた。
「セレナ!?」
「セレーナさん!!」
私はセレナを抱きかかえた。
「うっ……!?」
異常な程に体温が高かった。
加えて、酷く衰弱しているようにも見えた。
「な、なんだって言うんだい!?」
「こ、これは――うっ、ぐぅっ!?」
「チヒロさん!?」
ちーちゃんが急に左眼を抑えてうずくまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
シンシアさんが駆け寄り、ちーちゃんを支えた。
「はぁ……はぁ……これは、病なんかじゃ……ない」
ちーちゃんの左眼を抑えていた手の隙間から、ドロリと血が零れ落ちた。
「え……?」
「これは、”呪い”だ……!!」
指の隙間から見える、ちーちゃんの目は、あの時のように金色に光っていた。




