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前世の魂今世でも
昼を過ぎた頃になって、『ポートピア』に到着した。
シンシアさんもセレナもバテバテだったが、宿を決めるとシンシアさんはすぐに船着き場に交渉に行った。
セレナもちーちゃんも宿で寝ているので、私も同行することにした。
……
港町というだけあって、船着き場には大小様々な船が停まっていた。
「磯の香りがしますわね……」
そう呟く、シンシアさんは流石に良家のお嬢様と言うべきか、絵になっていた。
「きっと、海鮮料理が美味しいでしょうね。今日はどこかの海鮮レストランにしましょう」
「いいですわね……」
そういうシンシアさんはうとうとしいた。
「あの、大丈夫ですか?今日はやっぱり休んで明日にしても……」
「いえいえ、今日までしか停まっていない船もあるでしょうし、そうもいきませんわ!」
シンシアさんはぶんぶんと頭を振って、両頬を自分で叩いた。
「し、シンシアさん……?」
「こんなの社畜時代にはよくあったことよ!」
「しゃちく……?」
「寝不足で営業周りなんてよく聞く話じゃない!」
なんだか、黒くて淀んだ空気をシンシアさんを包んでいた。




