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目覚めた感覚
ちーちゃんが演奏を始めると、シンシアさんは何かに気付いたように……
「あら、これは……」
と、呟いたが、私には何の曲かわからなかった。
「ふむ……では、ついてきて下さいね」
「あ、はい」
シンシアさんに合わせて、習ったステップを踏む、
そのステップの中で、曲に合わせた踊りを導かれつつも――
この動作はいわば表現だ。
必ずしも決まったモノでなくてもいい。
私は徐々に理解していった。
テンポを刻む中で、リズムに乗るということ、
決まった動作である必要はない。
それが、あの変幻自在の剣技に繋がるということを――
もっとだ。
もっと踊りたい――
この感覚を掴めば、またその先が見える。
追及すれば、するほど、底が見えない。
これはまるで、食だ。
踊りを通して、技術を味わい、吸収する。
――私は、踊りを通して、ちーちゃんを、シンシアさんを喰らっているようだった。
シンシアさんの滑らかな動き、柔らかな仕草――
ちーちゃんの鋭い所作、力強い立ち振る舞い――
私はもっと、欲しくなって、もっと、吸収したくなって、
もっと、もっと、もっと、もっと――――
二人とのダンスは夜更けまで、続いていった。




