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永遠の一瞬
翌朝――私達は予定通り、村を発つことにした。
見送りにきたメメは、一晩経って、吹っ切れたような表情だった。
「……本当にここに残るつもりですか?」
どういう返事が返ってくるのかはわかりきっていた。
それでも、彼女のことを思うと聞かずにおられなかった。
「はい。私にはやらねばならないことが、出来ましたから」
「やらなければいけないこと?」
「お墓を、作ってあげないと……」
「村の人たちの?」
「ええ、ちゃんと弔ってあげないといけませんから……」
「それから、どうするつもりです?その後もずっと、この村に一人でいるつもりですか?」
彼女は当に天涯孤独になっている。
それでも、今を生きる以上、人との繋がりを絶つ必要はないはずだ。
「お墓の管理もしないといけないので、村から遠く離れるつもりはありません。
私には、長い時間があるので、それくらいでちょうどいいと思うんです」
それ以上は何も言えなかった。
その時、笑ったメメの、笑顔の真意を、私が理解できるようになるのはまだまだ先だろう。
彼女の時間がどんなに永くても、この一瞬の笑顔はとても儚く思えた。




